風が頬を撫で、私に触れて、向こうへ吹いていった。
吹き抜ける風は私をダンスへ誘うように、私の体を撫でていく。
(お誘いをありがとう。でもね)
さらさらと髪を巻き上げて、風はどうしてと私の手を引きたいようだ。
ふわりと収まったときに、ぽつりとつぶやいて返事をした。
「ごめんね。今風邪を引くわけにはいかないの」
びゅうっ、と悲しげに、すねるように風は私の横をすり抜けていった。
/11/19『吹き抜ける風』
燈火をそっと入れた。
ぽうっと明るくなったそこは、たくさんの箱があり、色が明るいものと暗いものに分かれていた。
「あぁ、こんなとこにあったのか」
悲しいところに積み重なった箱たちの中に見覚えのある箱を見つけた。
それは封じ込めた遥か昔の記憶。
どうして封じ込めてしまったのか、それはこの箱の鍵を開ければ分かるだろう。
でも、僕は見るのをやめた。
封じているということは、思い出さなくていいということだ。
「思い出すときは、思い出すさ。それまで――」
ここに長居は無用とばかりに、僕は記憶の部屋を照らしていたランタンの火を吹き消した。
/11/18『記憶のランタン』
冬へ
今年も君に会える時がやってきましたね。
君に会うと息が白くなるからすぐにわかります。
君に会うのは嫌いではないけれど、どうか突然来るのだけは勘弁してほしいな。
もう少し先の日々で、待っているね。
/11/17『冬へ』
君の笑顔が守れるなら
僕は月にだってなったって構わない
誰かに照らされて姿が見える月でもいい
/11/16『君を照らす月』
11/19/2025, 2:16:33 PM