ー生まれた時からー(安らかな瞳)
綺麗な目だった。
みんなと同じ黒色のはずのに、惹き込まれる魅力があった。
私が彼女を見つけたのは、中学生だった。
一人静かに過ごす彼女を見つけた時、えもいわれぬ複雑な感覚が全身を巡ったのだ。
私は彼女に話しかけるようになった。
だんだん、冗談を言える仲にもなった。
最後の冬。
中学校卒業が近づいていたある日、私は決心した。
(愛の)告白しよう。
それに混じっているのは、恋愛感情ではなかったけれど、恋人になった方が楽だと思った。
別々の高校に行くことを知っていた私は、そうでもしないと話せなくなると感じていた。
卒業式の日。
放課後に話をするつもりだった。
しかしよりにもよって彼女に、悲劇が起きた。
交通事故だと聞かされた。
朝。
引かれたのだと。
彼女の母親は、私を見つけて目の前で泣き崩れた。
「あの日娘は、今日は、特別な日だから、あなたのためにおめかしをして行くと言って」
言うべきか迷ったと言いながら、「彼女が私に恋心を抱いていた」と告げてきた。
「あなたのために、おめかしをして出ていったあの子は、いつもより遅い時間だったために、車に引かれてしまったの」
それは、私のせいだと言うことですか?
そんな言葉がよぎった。
おめかしをしたのは彼女自身だし、それで遅くなってしまったのも彼女の責任だ。
たまたま荒い運転をしていた運転手が、信号無視をして彼女に激突。
…あえて自分の罪をあげるのなら、彼女と仲良くなってしまったこと。
それは、理不尽と言うものではないか。
母親は、彼女と同じ目をしていた。
葬儀が行われた。
クラス全員参加することになった。
招待されたのだ。
青白く、血の巡りを感じられない肌は、気持ちが悪かった。
正直に、怖いと思った。
しかし彼女の目だけは、依然美しかった。
こんなに綺麗に感じたのは、初めて彼女を見たその日以来だった。
長い睫毛の向こうに、目蓋の裏側に、美しい球体が埋まっている。
花を置くとき、一瞬触れた肌は、氷のように冷たく。
私はそれでやっと、正気を取り戻した。
葬儀は滞りなく進み、ご馳走が振る舞われた。
人が亡くなったことなど忘れたように、楽しそうな空気が広がった。
心底気持ち悪い。
手を見つめていると、視線を感じ、彼女の母親と目があった。
その瞳は、彼女よりも、いや、比べるのもおこがましいくらいに。
体が震え、息がつまり、思わず唾を飲み込んだ。
どうして今まで気付けなかったのか。
視線を外すタイミングを見失った私は、暫く固まっていた。
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ごめんなさい。時間が…。
おやすみなさい。21:02
3/14/2026, 12:02:20 PM