渚雅

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「すごく幸福なことだと思う。羨ましいわ」
「そうかしら? 私は停滞を好まないけれど」

一枚の紙を中心にテーブルを挟んで向かい合うふたりの少女。彼女たちは教師から出された課題について議論を交わしていた。

その紙に書かれていたのはたった二言
『ずっとこのまま』その一文と,この言葉からあなたが考えたことを書きなさい。 という指示。

一人の少女はその一文を"これ以上を望む必要すらもない最高の状態"だと捉え,もう一人は"希望も目標も失った空虚な状態"だと捉えた。

少女達は互いに思う。自分たちの発言は正反対でいて同一。例えるのであればコインの裏と表のようなものだと。ゴールに辿り着くことは道標を失うことで,願いがないというのは満たされている証拠でもあるように。

そして二人の少女にとって『ずっとこのまま』であるということは理想ではなかった。なぜなら彼女達は成長の真っ只中。変化することに怯えず前に進み続けるのだから。

だから,『夢』とただ一言,用紙には記入されていた。



テーマ:ずっとこのまま

1/12/2024, 1:45:00 PM