「友情」
武者小路実篤の『友情』を思い出した。大学に入学した頃で、この本を選んだのは、新しい友人ができたからかも知れない。題名は『友情』だけど、この本は実は恋愛小説で、幸い、その友人と私は、同じ男性を好きになる事もなかったから『友情』のような、結末もやってこなかった。
夫と結婚して武者小路実篤記念館を一緒に訪ねた。夫は実篤の本を読んでいなかったけれど、私が興味を持っている場所へ、自分自身の興味とは関係なく、どこへでもつれていってくれる。そういう意味では、夫は親友でもある。いつしか共通の趣味、美術鑑賞やコンサートなども楽しんできている。強制した訳ではない。自然にお互いの興味のあるものを理解しようとする。それはやはり友情に違いない。
記念館には実篤の絵も飾ってあって、ある絵の中に
「君は君、我は我也、されど仲よき」という言葉があった。どれだけ仲が良くても、あなたはあなた、わたしはわたし、この心はとても大切である。友情には、あなたはあなたのままで良いという、自分とは別の人間という確たる思いが必要だ。それを忘れた友情は本物ではない。それは、人と人との関係において、最も大切なものだと感じている。
7/24/2023, 1:42:17 PM