大学に通うには、実家からは遠い。
私は長年暮らしてきたこの家を離れ、春から一人暮らしを始める。
「これはいらないな〜。…あ、これは使うかも。」
そんなこんなで荷物整理もあとちょっと。
残すは1番手をつけたくなかった趣味ゾーン。物が多いから後回しにいていた。
しかしそんなことも言ってられない、渋々このゾーンの片付けを始めた。
「…ん?」
なんだか無性に目を引いた。綺麗に折りたたまれた布?…いや――。
エプロンだ。
「懐かしいなぁ。」
高校の頃に部活で使っていたエプロン。まだ引退してから半年しか経っていないのに、とても懐かしさを感じる。
美術部。私が美大を目指すきっかけになった、私の学び舎。
どんなに綺麗に使おうとも、どうやっても汚れてしまった事をよく覚えている。と言うか、最後の方なんてもはや自分からエプロンを汚すように塗っていた。
最初はシンプルで、悪く言うなら凡庸。
だけど今は。
私の歩いてきた道。とても色とりどりな、私らしいエプロンだ。
『カラフル』
5/1/2023, 1:50:33 PM