酸素不足

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『降り止まない雨』


ザアザアと降る雨を、恨めしく見つめる。
ちゃんと予報を確認すれば良かった。
それか、折りたたみ傘をカバンに入れておけば良かった。
ゲリラ豪雨だから、そのうち止むだろうと、壁に寄りかかる。

「傘、無いの?」

適当に暇をつぶそうと、スマホのゲームアプリを開いたところで、声をかけられた。
聞き間違えるはずもない、彼女の優しい声だ。

「あー、うん」
「そっか、私も」

照れくさそうに笑う彼女の周りには、花が咲いているようだ。

「すぐに止むと良いね」
「あと五分くらいで止むっぽい」

すぐさまスマホのゲームアプリを閉じ、雨雲レーダーの予測を見る。

「そうなんだ。じゃあ、ちょっと待ってようかな」
「俺もそうする」

雨が止むまで、彼女と一緒だ。
どうせなら、もう少し降ってくれと願う。

「教育係、大変そうだな」
「いろんなことに気を遣うから大変だけど、結構楽しいよ」
「そっか。まあ、あんまり無理しないで頑張って」
「ふふ、ありがとう」

強く降る雨を見ながら、彼女と他愛もない話をする。
この穏やかな時間に、このままずっと、雨が降り止まなければ良いのにと思った。

5/26/2024, 1:12:40 AM