初心者太郎

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—運命の席替え—

宮野のクラスでは一ヶ月に一度、席替えが行われる。そして今日が、その席替えの日。

(また上原と隣になれますように。また上原と隣になれますように——)

宮野は胸の前で両手を組んで願った。
席替えの方法はくじである。一人一枚くじを引き、書かれている番号の席に移動するやり方だ。

宮野がくじを引く番になった。画用紙で作られたボックスに手を入れる。

(これだっ!)

番号には十九と書かれていた。隣で上原がくじを引いている。息を止めて手元を見つめる。

「私、二十番だ。宮野は?」
「俺は十九番だったよ」

奇跡的に番号が続いていたので、期待して黒板を見る。座席表が書かれており、不規則に番号が振られていた。

「どんまい、真ん中の一番前じゃん」上原は揶揄して微笑んだ。
「マジかよ……」

たとえ先生の真ん前だとしても、上原が隣にいるなら、と思ったが隣は違う番号だった。

「私は……。やった、窓側の後ろから二番目だ」
「いいなぁ」

席を確認した人から移動しろ、という先生の指示でみんな動き出す。

「じゃあね、宮野。一ヶ月、楽しかったよ」
「うん、俺も。また」

『楽しかったよ』と言われて胸が熱くなる。
来月はまた隣になれたらいいなと思いながら机を動かした。

お題:行かないでと、願ったのに

11/4/2025, 2:57:09 AM