『羅針盤』
今日も仕事が忙しく深夜の帰宅。眠気に耐えながらハンドルを握り家路を急ぐ。
後数分で家に着くところで、何かが前方の道路を横切った。減速して目を凝らすと車のライトに浮かび上がったのは赤い首輪をした柴犬だった。
また、あの子だ…。
夜に時々見掛ける柴犬は、いつも側に飼い主の姿は無い。こんな時間にひとりで歩いているのは何故だろう。
そんな私の心配をよそに、柴犬は歩道をこちらに向かって軽快な足取りで歩いて来る。目を遠く真っ直ぐに見据え、目的地に着くことだけを考えているかの様に。
見えない羅針盤に導かれ、夜更けの柴犬はいったい何処まで行くのだろう。
1/22/2025, 8:55:51 AM