彼女は独りだった。独りでも気にすることはなかった。寂しさを感じることは無かったから。
ある日のことだ。ショッピングモールを歩いていると、ぬいぐるみ屋を見つけた。
普段なら、素通りするはずだった。けれど今回だけは違った。何か惹かれるものがあったから。それが何なのか、彼女は分からなかった。
しかし、入らないわけには行かない。彼女は惹かれるがままに、導かれるようにして、店内に入っていく。
そして、出会った。一匹の黒猫のぬいぐるみに。子猫のぬいぐるみに。
それを見た瞬間、買いたいと思った。欲しいと思った。値段も手ごろだ。
彼女は躊躇うこと無く、子猫のぬいぐるみを手に取ると、会計を済ませて店を出た。
そして、帰宅するとベットの上に置いた。そこを定位置とするかのように。
彼女は独りだった。けれど、今は独りじゃない。黒い子猫のぬいぐるみがいる。喋ることも動くこともできないが。
それでも、彼女に癒やしを与える存在となっているーー。
11/15/2024, 10:57:31 PM