それでいい
忘れ物をして急いで教室に戻る。
教室に人の気配があって入るのに躊躇っていると、私の名前が聞こえて扉を開ける手を止めた。
「あいつってさ、化粧濃すぎてケバいよな?」
「あーたしかに、キャバ嬢みたい。」
クラスメイトの男の子達が私の話をしてる。
私は息を潜めて扉の死角に隠れて盗み聞きした。
「あいつの母ちゃん有名なデリ嬢だったの知ってる?」
「え?マジ!?じゃあ、頼めばヤらせてくれっかな?」
「ほんと、お前はそれしか考えてねぇよな、猿だわ猿。」
悪意ある言葉と笑い声に胸が苦しくて泣きそうになる。確かにママは褒められた仕事をしていたわけじゃないけど、立派に私を育ててくれた。化粧だってママが教えてくれてすごく気に入ってるのに。
ガタッと大きな音をたてて男の子がひとり席を立つ。
「…くだらない。胸糞悪いから帰る。」
グループの1番目立つ子だった、その子は最後まで私の悪口を言うことはなかった。
扉を開けられ不意にその子に見つかってしまった。
「あっ…。」
彼は私に声を出させないように口に手をあてて、シーッとジェスチャーした。
そのまま扉を閉めると私の手を引いて教室から遠ざかる。しばらく歩いて渡り廊下に出た。
「ごめん!明日、あいつらにも謝らせる。酷いこと言ってごめん。お前にもお前の母ちゃんに対しても。」
私は驚いて口を閉じたまま首を横に振った。
「俺は……その化粧、似合ってると思ってるよ。お前はそのままで大丈夫。それでいい。」
その言葉を聞いた瞬間、私の心臓はドカン!って爆発したみたいに大きく跳ねた。
4/4/2026, 11:11:23 AM