色野おと

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テーマ/タイムマシーン


タイムマシーンに乗るお話って、みんな過去に行くお話ばかりなのだけれど、それだけ私たちって過去に影響されて生きているってことですよね?

過去は変えられない。でも、過去を実体験することで大切な気づきを得ることになるっていう王道のストーリーがあるわけで。

でも実は私、過去を変えてしまったんです。
告白します。私は過去に行ってきました。

何を変えたかって?
いや、普通そこは「本当に過去へ行ったのか?」って聞くものではないでしょうか?……まあいいでしょう。

私が過去で変えてきたものというのは……
卑弥呼様が月に帰ってからの400年近くに及ぶ魔物との幻魔大戦の世の中が存在しなかったかのように、あらゆる歴史書を改ざんしたことです。

ええ、そうなんです。
何かをなかったことにすることは出来ても、何かがあったことにするなんてことは人間の力では出来ないことだからです。魔物と人間との壮絶な闘いがなかったことにすることは出来ました。でも、その代わりとしての400年近くの歴史的な出来事を無から作り出すことなど出来ませんでしたよ。卑弥呼様のお力ならば創り出すことも出来たのかもしれませんが。

日本の古代史で空白の時代があるのはそのせいです。
そのタイムマシーンはどうしたかって?
今から2000年後の未来へ行ってきました。そこで乗り捨てて、その時代のタイムマシーンで今の時代に連れて来てもらって戻ってきたわけです。

そりゃあそうですよ。タイムマシーンなんてモノは今の時代にはあってはいけない乗り物なので。その2000年後の世界の人がそのように言っていたので……そうです、彼らにとっては今の時代が過去のものなので、2000年前である今の2024年の史実を変えてはいけないと判断したわけです。もう、これくらいでよろしいでしょうか。それでは神の名のもとに、ごきげんよう。



そう言って、全身総白づくめのワンピースのような装いをして、首からは綺麗に磨かれた紺碧色の大きな勾玉の飾りを提げた怪しげな男は3人のSPに守られながら、ガラス張りの長い廊下の奥へと姿を消していった。

この取材を引き受けたジャーナリストである私は、この取材中、その男の白銀色した長い髪の毛が左右で瓢箪のような形で結われていたり、みぞおち辺りまで伸びた長く白い艶のあるあご髭だとか、窪んだ眼窩に青白い瞳が光るような眼をしていたり、彫りの深い面持ちなど、なんだかまるで映画の中で実写化された古代人をリアルに目の前にしているような気分だった。

1/22/2024, 2:43:30 PM