濃霧

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雨音に包まれて

静かな山あいの村。午後の空がどんよりと曇り、やがてポツリポツリと雨が落ちてきた。

小さな小屋の軒下で、茶色の子犬が一匹、丸くなって雨を眺めていた。名前はコロ。人懐こい性格で、村の誰からも可愛がられていたが、今日は一人だった。

雨音がしとしとと屋根を叩く。遠くでカエルの鳴き声が聞こえる。コロはふと耳をぴくりと動かした。草むらの向こうで、何かが動いた。

やがて、ぬかるんだ道から、白い子猫がふらりと現れた。毛は泥にまみれ、体は震えていた。コロは立ち上がり、ゆっくりと近づく。

「ニャ……」

子猫が弱々しく鳴いた。コロはそっと鼻先を近づける。敵意はない。むしろ心配そうだった。

子猫はためらいがちにコロに身を寄せ、そっと座った。コロは自分の体を少し伸ばし、子猫に寄り添う。二匹は一言も交わさず、ただ雨の音を聞いていた。

しばらくして、雨脚が強くなった。コロはそっと立ち上がると、小屋の中へ入った。そして、後ろを振り返り、子猫を見た。子猫もそれに続いた。

小屋の中は薄暗いが、雨をしのげる。藁のベッドの上に、コロはそっと横になり、子猫を招いた。子猫は少し躊躇したが、やがてその隣に身を落ち着けた。

雨音が、まるで優しい子守唄のように流れる。

外は冷たい雨の世界だったが、小屋の中は温かかった。二つの小さな命が寄り添い、互いの温もりを分け合っていた。

やがて、子猫は静かな寝息を立て始めた。コロも目を閉じた。

雨はまだ止まない。

けれど、その音は、どこか安心感を与えるものに変わっていた。

6/11/2025, 10:17:34 AM