「外国の血が入ってるらしいんだ、僕。
どこかはくわしくわからないんだけどね。」
事後に煙草を吸う、隣の男がつぶやいた。ナンパされたときは感じなかったけれど、横目でちらりとのぞけば確かに鼻筋が通っているなと思う。
「知りたい?自分のルーツ」そう尋ねると、「う~ん…、いいニュースなら聞きたい。」
「おぉ~さすがかぶれてるね!」
「なんらかの理由があって、現在親族でもない状況になってると思うからね」
「ロマンスグレーがいきなりあなたの祖父ですって現れたらどうする?」
「う~~ん……」あ、と眉間を開かせた彼は
ニオイについて知りたいんだよね、と話し始めた。
なんでも思春期から体臭が気になり、今でもボディーソープやコロンなど暗中模索なのだという。
「私は気にならないよ」
「よかった。それが第一関門だから」
そう言って笑う彼は可愛かった。
体臭がかわいくないから、コロンは可愛くしているのだといって、揃えている画像見せてくれた。体臭と混ざるとどうなるか、結局のところ使い込まなければわからないのだという。
「昔はムスク系が好きだったけど、だんだんきつく感じてきてやめた」
「今は何系?」
「オレンジ系かな、女の子っぽいけど」
「美味しそうだね」
話はそれなりに弾んだけど、連絡先は交換しなかった。
またどこかで会えて話すかもしれない、そんな気がして。
翌朝自分の手首からいつもと違う匂いを感じた。それが彼の髪ゴムだとわかり、そっとポーチに戻した。
title:花の香りと共に
3/16/2025, 11:35:30 AM