郡司

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涙の理由は、わからないこともある。
自分の心に気づいていないふりをしてるとき。
自分の心を無視しているとき。
涙が流れて、自分で驚くことも、本当にあった。

愛することを自分自身に許可しないとき。
愛されることを諦めているとき。
乾いた嗤いと雑な態度と言葉まわしで仮面を被る。
馴染みがある痛みを、新たに感じたくないから。

「私に愛されて喜ぶ人なんてこの世にいないよ」
煙草の煙にまきながら嗤いめかして言ったとき、
あの人は怒った。
「それは哀しいな」と一言を置いてふい、と去った。
あとは自分で考えろと言わんばかりに。

自分自身を騙しているときは、ひとの気持もわからない。あの時、あの人は、そんな私にまっすぐ「愛している」と言っても私がその心を受け取れないと気づいていた。
その日、私に見える世界は生まれ変わった。
あの人が何故怒ったのか、自分で考えてわかったから。

10/10/2023, 1:13:39 PM