ストック

Open App

ここしばらく、俺の心には厚い雲が立ち込めている。
それは天気のせいばかりではないだろう。
俺は、彼女との関係についてずっと考えている。


俺も彼女も軍人として10年以上の付き合いがある。
相棒というよりも、自分の半身と言われた方がしっくり来る。

ある日、部下の強い薦めに負けて、彼女に相棒以上の関係になりたいと告白した。
彼女は静かに微笑んで頷いてくれた。

恋人としての彼女と過ごす時間は、とても幸せだった。
彼女もそう言ってくれた。
頼れる相棒で、欠くことのできない自分の半身。そして、戦場以外で彼女と穏やかに過ごす時間はこの上なく幸福だった。
この時間が永遠に続けばいいと願ってしまった。

しかし、俺は同時に恐怖を覚えた。
この幸せに身を委ねてしまったら、自分の使命を果たすことを放棄してしまうのではないかと。
世界のことも、死んでいった仲間のことも忘れてしまって、自分の幸せを守ろうとしてしまうのではないかと。
俺は死んでいった仲間や殺してしまった人間の分まで、争いがなくなるまで戦わなければならない。
でも、彼女と戦場を離れた場所で感じる幸せは、俺の決意を鈍らせる。

彼女も時おり幸せそうながら悲しげな表情を浮かべることがある。
伊達に10年も彼女の相棒をしているわけではない。
彼女も俺と同じことを思っているのがわかった。


明日、もし晴れたら、公園のベンチにでも座りながら彼女と話してみよう。
恋人と相棒、互いにとってどちらがよりよいものなのか。
どうすることが俺たちにとって幸せなのか。

そして、どんな間柄でいようとも、俺と彼女の絆は永遠のものだと。

8/1/2023, 11:15:36 PM