「ねえ、私といても楽しくない? いつもなんか、しかめっ面してるっていうか……」
ああ、まただめ、なのか。
「そんなことないって。君とこうして一緒にいるのは本当に楽しいよ」
「……そう、なの? 今もほら、そういう顔してるわよ」
「そうだった? ああ、ちょっと眩しいのが苦手だからかも。昔からなんだ、ごめんね」
なんとか彼女は納得してくれたけど、たぶん、もう終わりかもしれない。
――現代からすればおとぎ話でしかない、おとぎ話と信じたいこの身体が、憎い。
これでも、先代や先々代などに比べたらまだ「マシ」だと言う。日中は出歩けない、さらに定期的な血液の摂取が必要――血液は人間でなければならない、なんて馬鹿みたいな制約もあった。それに比べれば、この身体は確かに恵まれているのだろう。
それでも関係ない。今生きている自分は、充足感が全然足りない。
努力すればもう少し「まとも」になるかもしれない。何か手段があるかもしれない。
過去にみっともなく足掻いてみせた結果はすべて、無駄だった。
『ごめんね。普通に生きられない身体で、ほんとうにごめんね……』
子どもの頃に、泣きながらそう告げた母親を思い出す。
――謝るくらいなら普通に生きられる身体にしてほしかった。
日中をほぼ室内でしか過ごせなかったのを知っていたから、とてもそうは言えなかったけれど。
手を振る彼女を見送りながら、さほど強くないはずの太陽の光にじりじり焼かれる感触に、行き場のない苛立ちを必死に飲み込んだ。
お題:太陽の下で
11/26/2023, 6:28:20 AM