『ようこそ。ここは死者の記憶が記された図書館。何かお探しで?』
「死者の記憶に興味はないよ。ただ、人生が何か知りたいだけ。」
『人生の意味ですか。それは、個人差のあるものです。確定されたものなどない、未知なるものです。』
「そっか。じゃあ、今まで生きてきたのは無駄なのか。」
『そんな事はありません。人生で、一度はあるはずです。生きていて良かったと思う瞬間が。』
「あったかな?忘れた。」
『それは、誠に残念ですね。』
「今日、死のうと思うんだ。学校でイジメに遭ってて、もう辛いんだ。生きたくないんだ。」
『左様ですか。』
「逃げるなとか言わないんだ?」
『貴方様は、止めてもらいたいのですか?残念ながら、私は止める気など毛頭ごさいません。』
「別に、止めて欲しいんじゃない。」
『ならば、早々に亡くなられては?』
「分かってる。その前に一つ良い?アンタにとって、命って何?」
『命ですか?命も人生同様、未知なものです。それ以下でもそれ以上でもごさいません。しかし…』
「何だよ。勿体ぶって。」
『この世界に生きるものは、人生からも命からも、逃げることなど不可能です。それらと我々は、常に隣り合わせです。生と死が紙一重なように。』
「へぇー。達観してんだね。」
『有難きお言葉です。』
「今日は、家に帰ろうかな。」
『おや、自殺はお辞めに?』
「うん。少し、命に向き合ってみるよ。」
『それは、残念。』
「また、いつか来るよ。」
『きっと次にお越しに来られる時は、貴方様は図書館に記されている事でしょう。』
『貴方様は、命から逃げられますか?本日も、貴方様の人生という名の物語を、お待ちしております。』
5/23/2024, 4:41:13 PM