yunyun

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さて、どうしようか。
今日、学校の宿題で、自分の大切なものについての作文を書くという内容が出た。しかも、明日みんなの前で発表するという。
別に僕に大切なものはない。親もいなければ友達もいない。
僕は生まれてすぐに両親を交通事故で亡くした。悲しいかと言われても悲しくはない。今は母方の叔母の家で暮らしている。
だけど、叔母達には嫌われている。理由は分からない。
叔母の子供とよく比べられ、笑いものにされる。お酒が進むって言いながら、お酒をたくさん叔母夫婦が飲んでいる。この二人はアルコール中毒でよくお酒を飲んでいる。そして、酔っているときは言動が悪くなるという最悪のオマケつきだ。その叔母の子供も、二人の影響でよく僕をからかってくるので、あの家は嫌いだ。
そんな家が嫌いだから、門限ギリギリまで、公園の裏山で過ごしている。あそこは誰もいないし、誰にも嫌なことを言われない。聞こえるとしても、鳥のさえずりと風で木と木が擦れ合う音だ。そんな静かな空間が僕は大好きだ。
今日もその裏山へ向かう。2、3分登ったところに、少し開けたところがある。そこで、移り変わっていく空を眺めながらぼぉーっと過ごすのが大好きだ。心が落ち着いてくる。
季節によって、空の色や夕方の空の色が違うって知ってる?
ずっと眺めていると分ってくる、僕だけの発見。
この発見をしたときは嬉しかったなぁ。
……これがいいかも。この空間での時間のことを作文にしよう。でも、このことを発表するとクラスの人達がここに来てしまうかもしれない。それどころか、叔母の子供も来てしまうかもしれない。
……この場所のことは書かないでおこう。僕の大切なものは、心を落ち着かせれる時間なのだ。
どんなに嫌なことがあっても、心を落ち着かせれば、楽になれる。
そう思うと、ランドセルを背負い直して、家に向かって歩き出した。
空は、秋特有の儚い夕焼けに覆われていた。

4/2/2024, 4:16:17 PM