『今日だけ許して』
あなたの声に溺れてく。
低すぎず、高すぎず、優しさの詰まった穏やかな声。
その声が泣きたくなるほど好きでした。
思慮深いあなたはいつも、私の心の触れられたくないところを避けていく。
話すのが上手で、つい絆されてしまう。
あなたは不思議な人で、ずいぶん年下な私に心を許してくれる。
誰にも話せなかった深い傷を、私にも背負わせてくれる。心地良いって、この時間が心を満たしてくれるってあなたは言ってくれる。
あなたと話すのが好きでした。
あなたの考えを聞くのが好きでした。
辛いときも苦しいときも、あなたの存在に縋って、過去の言葉を強く抱き締めていたの。
ときどき、この関係を表す言葉が欲しくなる。
でもきっと名付けない方がいいのでしょう。
この関係が普遍的で薄く軽いものに変わってしまいそうで、私は怖い。
だから、名前なんてなくていい。
あなたは悲しいくらいに優しい人だから、私の気持ちも背負ってくれる。
苦しいと言えば話を聞いて寄り添ってくれるでしょう。
辛い過去を打ち開ければぎゅっと抱きしめてくれるでしょう。
だめだよ。あなたが私で苦しむ姿見たくないの。
でも、ごめんなさい。
今日だけ許して。
あなたに溺れたままでいたいの。
2025.10.04
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10/4/2025, 10:10:36 AM