【夢見る心】
たとえどこにも行けなくても、どこかに行く夢を見ることだけは自由だった。眺めた写真の中の青い花畑、燃えるような木々の群れ、あるいは古めかしい図書館や、ひそかな息遣いで満ちた古城。訪れたことのない場所を歩く、それはどんなに素敵なことだろう。何も知らないわたしを、あなたは笑いもしなかったし憐れみもしなかった。去り際に一枚、写真を残していくあなたの心を、わたしは何も、知らなかった。
だから、今もこうして古びた写真を抱え続けている。青い花が咲いた丘、紅葉した森、海を渡った先のどこか。いつかのあなたの足取りを追うように、ひとりでずっと、歩き続けている。愚かなわたしはそうやって、いつかあなたに追いつくのだと、未だに夢見ることをやめられないでいる。
4/16/2024, 10:34:13 AM