かのこ

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『奇跡をもう一度』2023.10.02


 本日もますますのお運びをもって、恐悦至極に存じます。ありがとうございます。
 などと、かたっくるしい挨拶をしなければならないのが、私ども落語家でございます。本当は、今流行りのお笑い芸人のネタを拝借してご挨拶をしたいところではありますが、同じ芸人としてそれはどうよと思ってしまいますので、今回が遠慮しておきます。でも、言ってみたいですよね。おっはよろりーん!
 はい、やめておいて正解でしたね。若い頃ならもしかしたら許されたかもしれませんな。こう見えて若い頃はそれなりにヤンチャをしておりました。何人か頷いてらっしゃる方も、ひのふの……。ええ、私の若い頃のことは内緒にしておいていただけると嬉しく思います。……フリではございませんよ。
 しかしながら、そんなヤンチャをしていた私がこうして今も高座に上がらせていただいているのも、奇跡としか言いようがありませんな。普通の師匠なら即破門ですよ。嫌でしょう、仮にも真打が髪を紫に染めてピアスを二個だ三個だ開けてたら。それをうちの師匠は個性だからいいんじゃない、と言って許してくださったのだから。私だったら、そんな弟子は即破門にしていますよ。
 奇跡といえば、博打があります。博打というと賭け事ですな。パチンコやスロット、競馬などのことを言います。私も社会勉強の一環として、これまでいろいろやってきましたが、この博打というものは恐ろしいもので、一度当たるともう一度、当たると信じてしまうわけですな。「あの奇跡をもう一度」というやつです。
 のめり込みすぎると身を亡ぼすのが、この博打の恐ろしいところ。昔は花札やサイコロを使った遊びが流行っていたというわけです。サイコロはお釈迦様が説教のとき、人集めのために賭博場を思いつきその道具として考案したものだそうで。みごとその企ては成功。そしてお釈迦さまはそのお金で、祇園精舎というお寺を建てたそうでございます。このことから、博打で使うお金のことを「寺銭」と言い、負けることを「お釈迦になった」というようになったとか。
 まぁ、私はお釈迦になったことはないですけどねぇ。

10/2/2023, 1:23:42 PM