とある恋人たちの日常。

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 六月に入ってから少しずつ雨の日が増えてきた。空に広がる灰色の雲から沢山の雫が落ちて身体も心重くさせる。今日はそんな日だった。
 
 仕事が終わり、夕飯の買い物をしようと考えているとスマホが震える。そこには恋人からのメッセージが表示されていた。
 
『お疲れ様。仕事終わった?』
 
 私はメッセージアプリを立ち上げて、彼に返信を送る。
 
『今終わりました。これから買い物してから帰ります』
 
 そうメッセージを返し、ポケットにしまおうとする前に呼出音が鳴り響いた。もちろん、かけてきたのは彼だ。
 
「どうしましたか?」
『あ。ごめんね、突然』
 
 相変わらず、気を回してくれる優しい彼だ。
 私は自然と頬が緩む。
 
『まだお店?』
「はい。今、お店です」
『なら、迎えに行く』
「え?」
 
 彼の仕事は時間的にシフト制で、今日は普通時間のシフトではない。だから、このタイミングの電話すら驚いていた。
 
『最近残業が多かったでしょ。休めって隊長と先輩たちに怒られてさ。調整で今日は終わりになったの』
 
 救急隊の彼は、確かに残業が多くて彼の身体が少し心配だった。だから今日の夕飯は彼の好きな食べ物にしつつ、栄養が偏らないようにしようと考えていたんだよね。
 
『ダメ?』
「あ、いえ。嬉しいです」
『じゃあ、迎えに行くね』
 
 そう言われて通話を終えると、彼が来てくれるのを待った。
 
 正直ね。
 雨の日は仕事が忙しいはずなのに、最近の彼の仕事の時間が長くて顔色が少しずつ悪くなっていたからホッとしちゃった。
 
 私が夕飯を作っている間に休んでもらおうとか、リラックス出来る薬用入浴剤を使って身体を癒そうとか考えているうちに私の前に見慣れた車が停まってウィンドウが開く。
 
「お待たせ。さあ、行こう!」
 
 嬉しそうな笑顔に吊られそうになるけれど、疲労感のある顔色をしている。私の目はごまかせないですよ。
 
 私は車が来ていないのを確認してから、運転席のところに行くと、運転席側のウィンドウを開けてくれる。
 
「どうしたの?」
「迎えに来てくださり、ありがとうございます! 私、運転したいです」
 
 引かないぞ。という気持ちを込めて笑顔を彼に向けると、少し驚きつつ彼は扉を開けてくれた。
 私は彼に傘を向けながら出て私の傘を受け取ってくれる。そして私が運転席に乗ると、彼が助手席に向かってから乗り込んだ。
 
「さぁ、行きますよ!!」
「うん。お願い」
 
 私はアクセルを踏む。彼の車だから安全運転で帰りのお買い物デートに向かった。
 
 
 
おわり
 
 
 
三八六、さあ行こう

6/6/2025, 2:26:13 PM