「もう…あの人絶対鬼だよ〜!!」
ブリーフィングルームのデスクに突っ伏して、ブーブーと文句を垂れる同僚は13歳も年下の女の子。
「こないだオアシスの指揮やったばっかりで…今度は要塞……」
「…“家出”の代償かもしれませんね」
と揶揄うように言うと、机に押し付けたままの額をこちらに向けて、あからさまに嫌な顔をする。
重力に従って、むに、と押し付けられたほっぺが拗ねた顔にマッチして可愛らしいだなんて(セクハラだ、と言われそうで)死んでも言えないけど。
「……これが私なりの『蝶よ花よ』、なんですけどね」
「へっ、あっ、ご、GONさん?!」
ほろ苦い珈琲豆の匂いをさせながら背後から現れた長髪の盟主の声に、飛び上がるくらいの勢いで彼女が起き上がった。
かと思えば髪を整えてみたり、顔を真っ赤にして不自然な咳払いをしてみたり。忙しいな。
「期待してますよ」
と、切れ長のダークグレーの目を細めて彼女に笑いかければ、ほら単純。
「…が、がんばり、ます」
って、合わせられない視線のままはにかむから。
(だからほっとけないんだろうなぁ…)
8/8/2024, 1:36:52 PM