僕が小さい頃は君も小さくて、4本足で移動して、僕といっぱい遊んで、たまにママに叱られて。
君が朝からどこかに出かけるようになったら、ママと一緒に家で君の帰りを待って、君と公園に遊びに行くのが凄く楽しかった。
ママと君は手という前足を握って、僕はリードという紐が繋がれた。
ある時から君の帰ってくる時間が遅くなって、僕はもう待ちくたびれて、ふて寝する時間が長くなった。
それでも、日が暮れる前に帰ってきた君と2人で目一杯走って散歩するのはとても嬉しかったよ。
その頃からはママも昼間は出かけるようになったから僕はこの家が余所者に入られないように気をつけて過ごすようになった。
日中、この家を守るのが僕の仕事だってパパにいわれて美味しいジャーキー貰ったんだ。
でも、なかなか余所者は入ってこないから、楽な仕事だった。
たまに、塀の上にいる僕によく似た4本足で歩くやつに挨拶するようになった事は家族の誰も知るまい。
僕は家から出られないし、あいつは家には入れないから。
僕の散歩は日が暮れてから行くようになった。
君だったりママだったり、たまにパパだったりした。
パパとの散歩はいつもと違う道で楽しかった。
たまに、家族の誰かがこっそりと泣いていると、理由はわからないけれど、僕が一緒にいた。
一緒にいる事がいいような気がしたから。
嬉しいことはみんなで喜んだ。そんな日は決まって僕のご飯も豪勢になる。
君が大好きになった子を家族の誰よりも先に僕に紹介してくれるのは僕と君の秘密だよね。
僕はずっと家族で一緒にいるんだと思っていたのに、君は自分の荷物と一緒に出て行って、その日から帰ってこなくなった。
僕は、ママとパパの三人で暮らした。
ママは変わらず僕の世話をしてくれた。
ママもパパも凄く元気なのに、僕は楽しい散歩も走るのが遅くなった。
君が夏の暑い日に帰ってきたときは凄く凄く嬉しくて、おしっこ漏らしちゃってごめんね。
あまり走れなくなった僕と君だけで散歩に行ったら、君は昔みたいに汗だくになるほど走ってくれて、僕はついて行くのが精一杯だったけど、君がリードを離さないように頑張ってついて行ったよ。
でも何日かしたらまた君が帰ってこなくなった。
ママとパパと僕の暮らしは何不自由な事はないけど、いつも何か足りない気分。
君がいないと寂しいよ。
冬の寒くなってから、また君が帰ってきた。
今度こそはもういなくならないでって思ったのに、君はすぐにいなくなる。
君がいないと、家の中は凄く静かになるんだよ。
家族のみんな元気なのに、僕はなんだか起き上がるのも億劫で、ママが僕の好物ばかりくれるのに食べられなくなってきた。
毎日、僕の散歩をしてくれるけれど、みんなと繋いでたリードは使わなくなった。
その代わり抱っこで外に連れ出してくれる。
いつか仲良くなった塀の上のやつもしばらく見てない。
僕たちは二本足の君たちよりも早く歳をとるんだね。
知らなかった。
僕さ、多分君たちより先に天国に行くみたいだね。
その時はさ、リード持って行きたいな。
手の代わりのリードで繋がっていたいんだ。
いつか君たちが天国に来る時はリードを引っ張って連れてってあげるね。
7/14/2023, 12:41:58 PM