「見つめられると」
今日は珍しく暇だ。いつもはやかましい自称マッドサイエンティストも騒いでいないし、やることもしたいこともない。
ため息をついて、外を見る。どんよりとした空が広がっていた。
見るものも無くなってしまったので、目の前で謎の機器類を散らかしている「チョーカガクテキソンザイ」の動きを見ることにした。
揺れるミントグリーンの髪。
サイズの合っていない白衣。
それから、星を宿して輝く……というかなんかギラギラした目。
「何見てるんだい?」
いや、暇だから目で追ってただけだ。
それにしても、こいつ不思議な目をしてるよな。
なんというか、見るたびに色が変わっているような気がする。
「よくお気づきで!!!流石ボクを認知出来るだけある!!!ボクの目はニンゲンのそれとは違って高性能なのさ!!!詳しく知りたいだろう?!!」
いや、別にそこまで知りたく───「ボクの目はミクロからマクロまで、ぜーーーんぶお見通しなのさ!!!例えばこのイチゴの種!!!このくらいに拡大できるのさ!!!」
そう言いながら壁に相当精細なイチゴの種を投影した。すげー。
「それから、この星の姿を映してしんぜよう!!!」
たしかに、自分が暮らす星が映し出されている。
これは目というよりもむしろ超能力とかの類では……?
「この目は可視光スペクトルの値をランダムに映しているのさ!!!」
可視光スペクトル……?へー……??
最初は嬉々として自身の目について説明していたが、長く一緒にいるうちに段々にんげんくさくなっていった。
「……なんだい??見つめられても何も出ないぞ??」
にんげんくさく、にんげんくさく。
「なんだよ〜!!!そんなに見つめられると照れちゃうだろ?!!ボクの瞳にカンパイなのかい?!!そうかそうか!!!」
「……こほん。あー、これはボクによるニンゲンへの『最適化』された行動であることをお忘れなく!なんてね!!!」
見れば見るほど、不思議で綺麗な瞳だな。
「キミもいい目をしているじゃないか!!!黒は可視光スペクトルに含まれない色だからね!!!」
いつもはそんなこと言わないくせに。
見つめられても、何も出ないぞ?
でも、見つめられると少し嬉しい。
3/29/2024, 10:02:24 AM