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またね!


「またね!」
そう言ってあの子は笑った。
冗談じゃない。またね?またなんて一生無いわ。
いつだってそう。ニンゲンは自分勝手。
私は馴れ合うつもりはないんだから。

そう思っていたのに。

次の日も。「やっほー!今日はなにする?」
その次の日も。「きたよ!きいてよ、今日さー」
雨の日も。「雨やばぁい。大丈夫だった?」
晴れの日も。「私晴れてる日大好きなんだ〜」
ずーっと話しかけてきた。どうしてよ。どうしてこんな無愛想なやつに…。
聞いてもいないのに名乗るから名前だって覚えてしまった。シイナは毎日のようにきた。毎日のように話しかけてきて、必ず5時のチャイムで帰った。そして、必ず最後にまたね、と私に声をかけていった。
最初は不愉快に感じていたが、最近は…少し、少しだけ、会いに来るシイナを楽しみにしている私がいた。
1人で生きていくんだと決めていたのに、シイナといる時間が心地よくて、シイナが帰った後になんだか胸に穴が空いたような感覚になることが増えた。
どうしてだろう──?

その日も、シイナはきた。
いつもと違うのはかなしそうな顔だったことだ。
「あのね、、」
シイナが言った事はよくわからなかった。
ただ、私は別の場所へ連れていかれるらしい。
なんだっていいが、シイナには笑っていて欲しかった。
だから、あの言葉を今度は私が言ってあげる。

『───またね』

また会えるよ。だから泣かないで。
胸が寂しいと泣くのを私もこらえるから。

3/31/2025, 11:23:58 AM