あるところに
おいしそうな甘い蜜を蓄えたかわいらしい花が
ありました
時には桃色に
時には青色に
その子はくるくると花びらの色を変えました
周りにいる他の美しい花や
心優しい動物たちは
その蜜をたっぷりと含んだ花を愛していました
その子を大切にして
その子がもつ蜜にも惹かれていました
かわいいその子が成長して
花びらをひらくたびに
きらめく蜜は増えていきます
だれもだれひとりも
こんなにもおいしそうな蜜を
その子が持っている理由をしりません
みんなは花ひらいたときにしか
見守ってきたその子のほんとうの心を理解できません
あなただけは知っています
じつはかわいらしい子は
ずっと影で泣いていたのです
そのことは誰にもしられていませんし
誰にもしられたくないと思っています
そもそもどうして泣いているのか
よくわかりません
なぜかぽろぽろと溢れてしかたがないのです
お花は生きてきました
強さや弱さや激しさや優しさをひっくるめたのが
きっとあの蜜なのでしょう
美しいお花や優しい動物たちが
その蜜に魅かれるのは
なんとなくわかっているからでしょう
それでも黙って見守って愛し続けるのは
かわいらしい花が手にした
幸せの形のひとつなのです
きっと
2/7/2025, 2:32:53 PM