紫雨

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コップなんてどれでもいいでしょう?
いや、ダメなの。絶対。このコップじゃなきゃダメなのッ、!
…そんなに怒鳴らなくても良くない、?
緊迫した空気の中、君がそう呟いた。「あ、ごめッ」僕がそう言おうとする前に、君が続けて言葉を並べた。
「そんなに大切なの?もうボロボロじゃん。また、新しいの買ってあげるよ?」
その言葉には、なんの感情もこもってなかった。
僕はギュッとコップを抱きしめる。
"大好き"
そう呟いて、ティーカップの中に紅茶を注ぐ。
匂いには、記憶を呼び起こす力があるのだと、噂程度に聞いた事がある。
この、ティーカップで、この紅茶。まるで君が生きているみたいに感じられる。
このコップじゃなきゃダメ。君の、生きていた形を残して置かなきゃ行けないから。

11/11/2025, 6:42:29 PM