眠れないほど
眠れない、眠れない、眠れない。
こんな夜が何晩続いただろうか。
辛い、辛い。だけどこの想いが私を生かしている。
あなたが私の心を侵食している。
最初は本当に少しの胸の引っ掛かりだった。本当に少しの違和感。
だけどずっと、この胸に燻り続けている。
ああ、あなたさえ…。
「おはよう」
花が咲くようにきらきらとした声で話しかけてくる。
「最近寝不足? ほら、隈ひどいよ」
「大丈夫だよ。…最近読み始めた本が面白くって」
そう言えば彼女は安心したかのようにホッと息をついた。
ああ、本当に可愛らしい。
「あ、そうだ。今日は予定があって一緒に帰れないの。ごめんね」
「ううん、大丈夫。どこかお出かけ?」
そういうと彼女はその柔らかな頬を少し赤らめた。
それだけで私はすべてを察した。
彼女はとてもかわいい。きっと誰よりも。
顔のパーツとかそういう話じゃない。その天性の何かが彼女に愛というご加護を与えている。
彼女以外の人間はすべて彼女の背景なのだ。
彼女はなんだってもってる。なんだって手に入れることができる。
ああ、羨ましい。最初はただ、私も純粋に彼女のことが好きだったのに。
彼女にそのご加護がなければ、彼女にその才がなければ、彼女が私の大切な人を奪いさえしなければ。
まだ、彼女の横で笑えていたはずなのに。
また、私の心を侵食していく。私のすべてを食い物にする挙げ句、彼女は私の心までそうやって自分のものにしていく。
ああ、また眠れない夜がやってくる。
12/6/2024, 7:54:04 AM