お題:こんな夢を見た『ヤクルトスワローズ』
こんな夢を見た。
家でダラダラとスマホをいじりながらテレビを観ていた。
プロ野球のドラフト会議がやっていた。
そうしたら唐突に自分の名前が呼ばれたのだ。
東京ヤクルトスワローズから7巡目の指名だった。
会社から電話がかかってきて上司から「おめでとう」と言われた。
まだ入団するかどうか分からない、なんてとても言えなかった。
だって僕は中学高校、テニス部だったのだ。
次の日のスポーツ新聞の2面の右隅に、小さく僕の写真と名前が載っていた。
「未完の大器」
「知られざるダークホース」
格好良いキャッチフレーズを考えるものだな、と感心する。
言われてみれば僕だって未完の大器かもしれないし、ダークホースになれるかもしれないのだ。
結局僕は、契約金の500万円に釣られて契約を決めた。
しかし、それはあまりに認識が甘かったと言わざるをえない。
いざ神宮球場のグラウンドに出ると、ミサイルの様に硬球が飛び交い、ゴリラの様な男達がぶんぶんとバットを振り回していた。
僕は猟師に狙われた野ウサギの様に、芝生の上で逃げ惑った。
ボールから逃げ回ってへとへとになり座り込んでいると、内野席の前方に記者達が集まっているのが見えた。
その中心にいる人物を僕は知っていた。
あれは、村上春樹だ。
村上春樹は名誉スワローズファンとして知られていた。
さり気なく近くをうろついていると、ちょっと君と村上春樹から声をかけられた。
「例えばだけれど、君の場合は球拾いから始めてみるのも良いんじゃないだろうか」
まさに天啓だと感じた。
僕は、必死に球拾いに勤しんだ。
村上春樹が僕を見ている。
ビールとツマミを片手に、僕の球拾いを見つめている。
そうだ、いつかこの体験を本にして売り出そう。
僕は多分、半年かもっと早い時期にクビになってしまうだろう。でもそれで良いのだ。
史上初、元プロ野球選手で作家デビュー。
悪くないなと思った。
1/24/2024, 2:21:00 AM