喜村

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 俺にとっては、ここは天国だ。
 俺はここ数年、この部屋に引きこもっている。
 ご飯は一定の時間に部屋の前に運ばれてきて、一日に一回二リットルの水も運ばれてくる。
食べ終わればまた扉の前に置いておけば片付けてくれる。
 部屋にはパソコンもスマホもあり、エアコンもあって快適そのものだ。
 住人が仕事に出掛けた時に、俺は部屋から出てお風呂に入り、トイレをする。
 もし、住人がいる場合は、空いたペットボトルの中に用を足す。
 窓どころかカーテンもずっと開けていない。もう何年、外の空気を吸っていないだろう。

 そう、俺はニートである。

 でも、いつまでも親が生きていないことくらい、俺にだって分かっている。
 このぬくぬく生活が、終わってしまう?
 世間と言う闇の世界に、俺も出なくては行けないのか?
 過ごしやすい楽園の光のこの部屋を出なければいけないのか?
 頭の中では分かっているんだ。いつかは闇に飲み込まれなければいけないことを。

 でも……

「やだなー……」

 ベッドの上に、自分の巨体を仰向けにし、天井に向かって息切れ切れに、俺はそう呟いた。
 光と闇の狭間で、俺はどっちに行こうか、未だに悩んでいるのである。
いつかご飯が運ばれなくなってしまう、その日まで。


【光と闇の狭間で】

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12/2/2024, 11:18:43 AM