ささやき
??
『………目が痛むのです。』
法師
『ん?』
??
『お助けください。目が痛くて泣くことさえ
出来ません』
法師
『蝶?…こんな季節に…』
真冬で雪が降っているときに法師は女性の声を聞き取る
??
『…もし、法師様、何かお探しですか?』
法師
『いや、探し物ではないのだが、今、耳元で女性の声が』
??
『まぁ、法師様も聞かれましたか』
この、すすき野原には、かつて、1人の女が
行き倒れて死んだという伝説があるのです。
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志村新八は興奮して叫ぶ
『ふぉーーーーーーーーー!!!!!』
坂田銀時
『うるせぇよ!小町の物語が聞けれねぇよ!』
死柄木弔も志村新八を睨む
そして、勝手に[かわいいだけじゃだめですか]を
掛けるメガネとも呼ばれる志村新八
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その美しさで数多の貴公子に求婚されたのにも関わらず
誰1人として愛そうとせず、やがて年老い、誰にも
顧みられることもなく諸国を放浪した果てに
ここで命を落とした哀れな女です。
法師
『なんと…その様な哀れな死者であれば[弔]って
やりたいが』
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死柄木弔
『弔って呼んだ!?弔は、この俺だ』
死柄木弔はドヤ顔をしたが呆れた坂田銀時は
『死柄木、お前じゃないから!小町のことだから!』
志村新八は、小野小町ストーリーを聞きながら
音楽に合わせてダンスをしている
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
??
『ご親切な法師様。どうか、その女の物語を
お聞き下さいませ』
〜あれは、いつの頃だったでしょう〜
『今夜は百夜目。あの方は来て下さるかしら?』
雪が降っている中、1人の男が外に行き出歩く
『止めるな!私は約束したのだ!必ず百夜通って行くと』
『無理でございます!この雪の中、牛車も使わずに出歩いて行くなど!ただでさえ、お風邪を召していらっしゃるのに』
『ようやく九十九夜を通ったのだ。今宵通えば
小町に会える…都に並ぶ者なきほどに美しいという
あの顔を、ようやく拝めるのだ…』
『少将様いけません!』
男、深草少将様は、若い女房を振り解いて
1人で真冬の中、再び出歩く
若い女房
『少将様!』
少将
『待ってろ、小町、今宵で百夜明日には…お前に会える』
その昔、都に小野小町と呼ばれる女がおりました。
名門小野氏に連なる女で宮中の局町に住む女房だった為、そう呼ばれていたそうですが、今となっては素性は
定かではありません。
※局町=宮中で女房たちの私室が並んでいる所
ただその容姿は、例え用もなく美しく優れた歌詠みでも
あったことから、都の公達はコソッと小町を慕い
求婚者は引きも切らぬ程だったと申します。
少将
『…小町…小町、小町………小町…』
小町?
〜私を想って下さるなら人目につかない様、身を
やつし、歩いて百夜お通い下さいな〜
少将
『………小町…』
小野小町は少将に意地悪な言葉を掛けたのか
それとも、彼の幻覚の声か、深草少将は真冬の真っ白な雪の道で倒れ死んだ
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銀さん
『えっ!少将死んだの!』
死柄木
『うるせぇな。これただの伝説だからな』
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真冬の光景を見ている小野小町は、少将様か死んだという知らせを聞き
『…そう、来ないのね、少将は』
と、彼女は薄い笑みを浮かべていた。
時は経ち、女性たちが集まる会に参加した小野小町は
秋の夜も 名のみなりけり 逢ふ(う)といへ(え)ば
事ぞともなく 明けぬるものを
(秋の夜長など名前だけのこと愛しい方とお会いして
いると、呆気なく明けてしまうのですもの)
小野小町は1人になり、女性たちが彼女のことを囁き始める。
コソコソコソ
『そう言えば、深草少将様がお亡くなりになったとか、』
『ええ、何でも、惨めな身なりで雪の中に行き倒れていたそうなのよ』
『そんな形をしてまで通っていたお相手と言うのが』
小野小町は、女性たちの声を盗み聞きして言葉が出てこないのだ
『本当に、どれだけの公達が、あの人に熱を上げては
破滅していったことでしょう』
『なのに小町は自分の恋焦がれた公達がどんな不幸な目に遭おうとも、まるで気にしないのだから』
むしろ、そんな殿方が現れる度に、
小町の歌は冴えていく
まるで、小町を恋い慕う人の
想いを吸い上げて、ますます
鮮やかに色めいていく様な
にゃーーーーー
??
『白拓!!』
にゃーーーーー
小町
『可愛い子猫』
??
『おーい!はくたくー!!全くもう、何処に行ってしまったんだ?』
にゃーーー
ぐるぐる
小町
『子猫ちゃん』
??
『この辺に来たと思ったのだが…』
小町
『…何かしら?』
??
『女房連中が逃した猫の捜索までしなければ、宮仕えも楽じゃない』
小町は簾から子猫をソッと出す
『お探しの猫でしたら、ここに』
にゃーーー
??
『あー!いた!白拓!』
子猫を探していた青年は猫を抱っこする
??
『何処へ行ったかと思ったら、』
猫を抱っこしてあげた青年は小町の前にある簾近くで
??
『申し訳ありません。女房殿。局町に忍び込むとは、コイツもやっぱりオスだなぁ』
小町は微笑んで青年の声を聞き取るが
??
『…なんでも、この局には小野小町と呼ばれる宮中随一の美女がいるとか、コイツも小野目当てで忍んできたのでしょう。』
小町
『………まぁ』
にゃーーー!
??
『こら白拓、お前の体は雪で、まぶした様に真っ白だが
それで下心まで覆い隠せたとは思うなよ』
小町と青年
『わっ!』
大きな風が吹いて簾が動いて小町と青年の顔がハッキリと、お互い見たのだ
………パサッ
??
『すごい風だ』
その時から一体何が起こったのでしょう
吹からに秋の草木にしほ(お)るれば
むべ山風をあらしといふ(う)らむ(ん)
(山から降りてくる秋の風は、いつもこうやって
枯らす。なるほど山に風と書いて嵐と読むわけだ)
??
『それでは失礼します。女房殿』
それまで、どんな貴公子にも言い寄せれても
揺らぐことのない彼女の心が、まるで硬い氷が春風に触れて溶ける様に、一瞬でとかされてしまったのです。
知ってる?衣を裏返して熟睡すれば
恋しい人が夢に現れるんですって
いとせめて恋しき時はむばたまの夜の衣を返してぞ着る
(いっそ、この夜の衣を裏返してしまえば
夢の中で愛しい人と会えるのに)
またや、女性たちのささやき声が聞こえるようになったのだ
『あの小野小町さんが近頃、恋をしているらしいわ』
『えっ!?あの、氷の姫君が!?』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
坂田銀時(銀さん)
『氷の姫!?アナ雪じゃねーか!』
メガネで志村新八が踊る
かわいいだけじゃだめですか?の歌詞で
[たぶん小野小町も本気出してた!]
の、歌詞でハモる志村新八と
アナ雪のレディゴーとハモる
坂田銀時
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再びの囁き声を聞く小野小町は
外の庭に行く。
『さぁ?けれど、あの方のことですもの。それは
さぞかし尊い身分の殿方と美しい恋をなさっているのでしょう』
その若者と会ったのは一度きり。
何処の誰とも分からぬ
さして、身分が高いとも思えない程の青年でした。
けれど、小町のその面影は忘れられず毎夜毎夜
夢に見ては、その想いを募らせていったので
ございます。
かぎりなき思ひ(い)のままに夜も来む(ん)
夢路をさへ(え)に人はとがめじ
(限りない思いのままに夜ごと通っているのです。
夢の中であれば人はとがてないでしょうから)
小町は寝ていた
そして起きると…
??
『女房殿、お久しぶりです。先だっては失礼しました。今日はお別れに来たのです』
小町
『!?』
??
『この度、遠国に赴任が決まりました』
小町
『………』
??
『不思議なものですね。たった一度しか会っていないのに、何度も貴方の夢を見ました。どうかお元気で
女房殿ご縁がありましたら、また、いつかお会いする
こともあるでしょう』
小町は簾を半分下ろしたが
??
『いつか、ご一緒に田舎見物はいかがです?貴方と共にならば、どんな景色も色付いて見えるでしょう………
などと、私の様な者が言っても、ご迷惑でしょうね
忘れてください』
小町は簾を下ろしたがソッと簾から青年の姿を見ようとする。
??
『私は夢の中でお会いした貴方の面影を連れて任地に赴くと事に致しましょう』
その後、年老いた小町は宮仕えを辞し1人諸国を
大きな旅に出た。そして大きな旅にて
何処も知れぬ草場の陰で朽ち果てたのでございます。
法師
『………その、小野小町の幽霊が、この
すすき野原に留まっていると』
??
『ええ』
法師
『なんと哀れな…しかし不思議だ。どうして彼女は
そこまでして恋に焦がれた相手に付いていかなかったのだ?』
??
『さぁ?もしかしたら、怖かったのかもしれません。』
法師
『怖かった?』
??
『夢の中ならどんな恋でも美しい恋ができましょう。けれど、うつつ(現実)に、差し伸べられた手を取ってしまうと、もう2度、夢の中で会えなくなってしまいます。』
法師
『夢の中の恋は本当の恋ではないだろう?』
思いつつ寝ればや人の見えつらむ(ん)
夢としりせば覚めざらましを
(想いを寄せながら眠った夢の中で、あの方が見えた気がします。夢と分かっていたなら、いつまでもさめないでおりましたのに)
??
『もしかしたら小町も分からなくなっていたかもしれません。うつつ(現実)のあの方を愛していたのか、それとも夢の中で、あの方を愛していたのか、ただ夢の中で
あの方をお会いした小町は幸せでした。それだけは小町にとってしんしつと言えるものだったのでしょう………』
法師
『おなご(女)の拙僧には分からぬ、けれど
その女がこの地で朽ち果てたと言うのなら、せめて
お経の一つでも読んで[弔]っておくとしよう』
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死柄木『とむらーー♪弔っておこう!』
坂田銀時『だから、死柄木じゃなくて小町のストーリーだって言っているだろ!』
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??
『親切な法師様、小町も………喜んでいる事でしょう…』
ジャリと法師が唱えると同時に女の姿は、消えて行く
そしてクッキリと骸骨が現れて、その眼窩からススキが生えていた。
小野小町[完]
志村新八は泣きながら小野小町を讃えてダンス中
[そして小野小町も本気出してたー]
フォフォフォーー!!!!!
遠くに土方歳三…いや、3次元オタクの土方十四郎がいる
2次元オタクの志村新八はまだ気づかない
死柄木と坂田銀時も志村新八、土方十四郎の態度を見て呆れていた。
[完]笑
4/21/2025, 3:09:09 PM