Open App


 
  どんよりと重い灰色。空に喜怒哀楽があるなら哀に当てはまるのだろうか。
 天候なんて誰にもわからない。大体の予想をたてるくらいだが、…見えなかったはずの息が白く、冷たい空気がツンと鼻をさせば雪が降ると身体に染み込んだ経験が教えてくれる。
 雪が溶けはじめて地表が見えたというのに、これではまた隠されてしまうだろう。暫くは固い地面を踏めないと思うと、寒さは比べ物にならずとも故郷にいるような錯覚に陥った。

「寒くない?」
 俺より体温が低く判別が付きにくい、ポケットに誘った君の手を握る。
「まだ大丈夫」
 鼻先を赤くして説得力がなかった。春の気配に軽めのコートを着た君は家に着く頃にはきっと冷えている。すぐに部屋を暖めて、湯船にお湯をためないといけないな。
 厚い雪雲に覆われて雪が降りだした。そろそろ青空が恋しくなってくる頃だが『物憂げな空』はまだまだ続くらしい。

「また積もると思うよ」
「そっか。じゃあまだくっついていられるね」
 君の指先が、俺の掌をゆっくりと探り絡みついた。人肌が恋しいのだろうか、甘えてくるなんて驚いた。

「帰ったら、うんと暖まろうか」
 雪の白さを際立たせるような君の赤い耳が俺の熱を上げて、音を立てず細やかな雪の結晶が髪を飾っていった。

2/26/2023, 7:25:06 AM