Open App

『バカみたい』

あなたの背を追うように動いてしまう視線も、あなたの言葉一つで分かりやすく乱高下する気分も、あなたの香りに自然と上がる体温も。

――ああ、本当にバカみたいだな、俺。

届くわけがないと、叶うわけがないと、分かっていたはずなのに。それなのに、こんなにも振り回されて、悩んで、それでも諦められなくて。

そんな俺の心中も知らずに、あなたはふわりと柔らかな笑みを浮かべて、いつものように優しいまなざしで俺をじっと見つめる。
それが誰にでも向けられるものだと分かりながらも高鳴ってしまう心臓に、漏れ出しそうになった嘲笑をそっと押し殺した。

3/22/2024, 5:25:43 PM