「冬へ」(冬の散歩とクロ)
朝。空は、鉛色。
風が、乾いて冷たい。
こういう日は、部屋の光が白い。
光は、温かさと冷たさを分ける。
クロと散歩に出る。
アスファルトが凍てついている。
クロの息が、白い煙になる。
それが、冬の合図。
手袋の指先が痛い。
でも、クロは歩き続ける。
力強く、地面を蹴る。
私もその歩調に合わせる。
景色は、何もかも色を失っている。
ただ、輪郭だけが残る。
世界が、シンプルになっていく。
クロは、時々私を見る。
「大丈夫だよ」と、言っている気がする。
その黒い瞳に、私は救われる。
冬は、言葉が要らない季節だ。
ただ、隣にクロがいる。
それだけで、全てが足りている。
私はこの静かな時間を、
ポケットに入れて、家に帰る。
11/17/2025, 1:35:31 PM