マサティ

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お題:特別な夜『フルムーンパーティー』

月の満ち欠けで体感時間、いや世界の見え方が変わることに気付いたのは、確か高校に入学してからのことだ。
簡単に言うと、満月の日は周囲の動きが遅く感じ、新月の日は逆に速く感じられるということ。

僕は子供の頃から、マイペース、ぼんやりしているなどと言われて育ってきた。
多分だけれど、僕は勉強も運動も人並みよりは上手くできる子供だったと思う。
けれど、どうしようもなく駄目な日が定期的に訪れた。
浮き沈みが激しい、勿体ない、何故集中が続かないのか。
親も教師も首を傾げた。
僕だって、好きでそうしているわけじゃない。
同じように一生懸命やっているつもりなのに、どうしようもなく身体が重くなり、思考は持ち上げたパズルの様に崩れていった。
もがけばもがくほど、水底へ沈んでいく様な感覚。
この周期が月の満ち欠けに関係していることに気付いたのは、高校1年生も終わりかけ17歳の時だった。

満月が近くなると、次第次第に思考が加速してゆく。
特に月が天頂に昇る深夜、目が冴えて活力が漲る。
周囲の動きがスローモーションに見えるようになる。
新月の日はその逆だった。
何をやっても駄目なその日、なるべく人と口をきかず目立たないことだけに専念した。
しかし学校や社会というのは、常に一定の頑張りが出来ない人間を排除するものだった。
僕は学校を休みがちになり、深夜徘徊をするようになった。

ただ、満月の夜に焦がれて生きるようになった。

1/22/2024, 8:21:00 AM