ほろ

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数十年ぶりに、地元に帰ってきた。
私が出ていった時は田んぼだらけの田舎だったのに、今ではすっかり商業施設や娯楽施設が建ち並ぶ『そこそこ便利なまち』になっている。
「都会ぶっちゃって、まあ」
知っている店も、人も、家も、もうほとんど見当たらない。あるのは馴染みのない店や、人や、家である。
「ん?」
あと十分で実家だという頃、右手に駄菓子屋が見えた。外にアイス用のクーラーボックスとガチャガチャが二つ。中学を卒業する時まで通っていた昔ながらの店だ。
「なつかしー」
車を停めて、中に入る。売っている商品は、どれも五百円以下のお財布に優しい価格設定。五円チョコとラムネを手に取り、レジの男性に渡す。駄菓子屋のばあちゃんの孫かなぁ、と思いながら精算し、車の中で五円チョコを口にした。
「あっっま」
全国の砂糖を集めたかのような甘さ。こんなに甘かったっけ? 自販機……コーヒーは……
「あ」
無意識にコーヒーを探す自分に気付き、思わず笑った。
自分は町ほど変わっていないと思っていたけれど、そんなことはなかったらしい。所詮、変わらないものなどないのだ。

12/26/2023, 1:34:58 PM