にえ

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お題『「こっちに恋」「愛に来て」』

 皐月はコハナちゃんにご執心。
 コハナちゃんとお散歩に行くときは必ず隣に並び立って歩く。
 おさんぽリーダー(家庭内でそう呼ばれているらしい長男くん)で大学4年生の昌隆くんが、
「危ないから僕の隣を歩こう。ね?」
と言っても頑として首を振る。
 皐月の話をよくよく聞くと、
「だってね、さっちゃん、コハナちゃのことだぁいすき。だからね、ずっと、ずぅっと、いっしょにいたいの」
と言ってキャッと恥ずかしそうにスカートで顔を隠した。パンツが丸見えの方がよほど恥ずかしいと思うんだけど。
 まぁ、そういうわけでお散歩の時間は1秒すらも惜しんでそばに居たいらしい。
 ある日、おさんぽサブリーダー(家庭内でそう呼ばれているらしい次男)で大学1年生の真二くんが散歩を担当をした時のこと。
「ごめん、さっちゃん、七海さん。このあとバイトがあるから早く行かなきゃいけなくって」
 皐月は真二くんの早口な内容がよく分からなかったらしい。しかし、コハナちゃんは途中で伏せをして動かなくなってしまった。
「こらっ、コハナ、帰るぞ! おいコハナ!」
 しかしコハナちゃんは一向に動く気配はない。そんなコハナちゃんの頭を撫でながら皐月は、
「コハナちゃん、コハナちゃん、さっちゃんもコハナちゃんがだあいすき。だからね。だから、ずーっと、いっしょに、いようね」
とずっと言っていたし、コハナちゃんも嬉し恥ずかしそうに、きゅーん、と鳴いていた。
 このひとりと一匹は、愛し合う恋人同士にしかもう見えないのであった……。

 蜜月の恋人同士(?)の皐月とコハナちゃん。
 ある日、
「七海さん。そういえば、いつもお迎えに来てもらってばっかりだねぇ。今度は白石さん(コハナちゃんのユーザーさん)のおうちまでお迎えに行ったら? ついでだからウェディングケーキでも作るか!」
そう言ってお義母さんはカラカラと笑った。
 皐月はコハナちゃんと自分との結婚とを夢見ているのか、またスカートで顔を隠した。
 いや、だからパンツが丸見えだってば。

4/25/2025, 10:41:53 AM