黒山 治郎

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いつかの光を夢見る先行きへの不安
なおも膨らみ続ける胸と鞄の中身
正しく向き直り続ける水盆の中心針


針が示すのは、方角だけではなかった。

航路から後戻りという選択肢を消して
この進路が足元を泥濘るませない事を祈る。

縮込めていた背と共に、小さな帆を風で張り
利き手の指が白くなる程、舵輪を強く握り締め
仕上げにと溺れ慣れた顔を大きく拭った。

夢物語の出航を告げる鬨の声は 一つ。

ー 羅針盤 ー

1/21/2025, 9:27:52 PM