ミュータウン。ここは芸術の全てが集まる地。森の中に主この街は自然と一体化しており、常にインスピレーションが分けるような工夫が至る所に施されている。雲が七色に染められたり、お菓子が宙に浮いたり、水を掴んで遊んだり。それはまるで夢の世界のような、絵本の中の世界のような、あまりにも非現実すぎる街並みであるため
『チルドレンファンタジー』
と、呼ばれている。
その中の一角。ミュージックエリアでは、今から盛大なライブが行われようとしていた。タスカ堂。半径50mの二階建て木造建築だ。木造建築といっても外壁は透明で、世にも珍しいガラスウッドをふんだんに使用した、木造でありながらどこか近代を感じる作りになっている。そこにわらわらと人が集まってくる。入り口は渋滞しており、もう一つのゲートが開放されようとしていた。
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タスカ堂出演者室
「はぁー緊張スル〜」
机の上で指をかつかつさせ貧乏ゆすりをする女性がいた。整った顔立ち、金色の目、白金の髪を一本で束ね、所々に花が飾られてある。薄ピンクのワンピースを着こなす彼女はどこかのお姫様と見間違えるぐらいの美しさだ。
「…..フェルス様。お客様の準備が整ったと連絡が。」
そう言って黒スーツ黒眼鏡の男性が入ってきた。
「りょーカイ!うっし、いっちょやってやりマスか!」
「言葉遣い……」
そう言ってフェルスは部屋を飛び出す。黙っていれば大人な雰囲気を感じるが、動けばまるで無邪気の子供のようだった。走り抜けた先には関係者会場入り口と書かれた扉があり、それを思いっきり開けて中央に立つ。観客席とステージには一枚の幕が挟まれており、互いに見えなくなっている。幕の向こう側から観客の声が聞こえる。フェルスは胸に手を立てて深呼吸をする。
(今マデの頑張リを皆さんに見セルだけデス。なに、簡単なことデスね)
ピアノの音が聞こえ始めた。それと共に観客は一斉に静かになる。そして誰もが知るあの曲のメロディーへと変わっていった。その瞬間一気に歓声が沸く。そう、歌姫フェルスのファンなら誰もが知るあの曲。遂に幕が上がる。フェルスはマイクを口に近づけて思いっきり叫ぶ。
「それでは最初の曲!『君だけのメロディー』!!」
6/14/2025, 8:53:21 AM