椎名

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「ほれ、これつけてみろよ。」

 そう兄貴手渡されたのは水泳用のゴーグルだった。ハゲかかった、好きだった男児向けアニメのプリントと、薄いブルーのレンズ。小学生の頃に俺が使ってたヤツだ。

「なんだよ、いきなりこんなの渡してきて」
「いいからつけろよ。もう泣きたくないんだろ?これをつければ泣かなくなる、お前は強くなれるんだよ」

 兄貴に言われ、俺はしぶしぶゴーグルをつける。キッツキツのパッツパツで、おおよそ大人の男が付けるもんじゃないなと思ったのもつかの間、

「…なんだこれ、凄い兄貴、目、痛くない…!!」

クリアになる視界。さっきまでシパシパしていた目が無敵になる感覚。兄貴はそんな俺を見て得意そうに笑う。

「今のお前なら、コイツにだって打ち勝てる。負けんな、勝ってこい!」
「うん…!」

 もう負けないよ、兄貴。このゴーグルがあれば俺はもう二度と泣かない。
 戦いを諦めかけていた俺は、再び武器を握った。母さん愛用歴十年の包丁。そしてヤツを手に取る。

「今度こそ…やってみせる!!」

 木っ端みじんにしてやるぜ、玉ねぎ。

3/17/2026, 10:47:56 AM