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今年は梅雨なんてとうに過ぎ去ってしまったかのような夏日が続いている。
からりと晴れてくれればそれでもいいのだが、のっぺり張り付くような湿度。
不快指数も相まって今日の教室はいつになく静かだ。
まるで破裂前の風船のような、嫌な緊迫。
誰かが何かを告げる、もしくは行うと容易く弾けるのだろう。
食事後の5限目でなけば。
大半の生徒が各々体を取り繕って好きなように過ごし、それを教師は黙認。
藪蛇なんて突かず、過ぎ去ってしまえばいい。

達観といえば聞こえはいいが、こちらも好きに過ごしている側である。
あちらも同じく授業中であるはずなのに送られてくる色とりどりの『あじさい』。

『なあ、何色が好き?』

形も色も多様に増えた、愛でられた花。
色移るから浮気なんて、可哀想な花。

『あなたの色』

なんて、素っ気ないやり取り。
少しだけ間があって、僕の無茶振りに的確に合わせる写真。
きっと向こう側では得意気に笑っているのだろう。

想像して、少し寂しくて。
あなたからもらったたくさんの色を眺めて。
背筋をほんのすこし伸ばした。

6/13/2024, 12:13:51 PM