『夢へ!』
新人が入った。
人の異動がほとんどない職場なので、大変珍しいことだ。
憧れてなる職業でもないし、どういう経緯でやってきたのかは聞かないつもりでいたのだが。
「ずっとこの仕事に憧れてました!夢が叶ってうれしいです!」
驚いたことに、新人は喜色満面の笑みを浮かべて仕事道具を振り回している。
こらこら、やめなさい。危ないから。
それと、まずは刃を研ぐところからだから。
綺麗にスパッと刈り取れるように。
現世の未練を断ち切ってやれるように。
「かっけぇ〜」とか言って決めポーズをとるのは、それ、後で君の黒歴史になるからね。
実際のところ、そんな悠長な時間はないのだ。
この地球上で、日々どれほどの死者を迎えに行かねばならないことか。
1日のノルマを聞いたら腰を抜かすだろうなと思いながら、手にした大鎌を見つめた。
4/11/2025, 7:11:20 AM