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ハッピーエンド


終わりよければ、すべてよし、その人はそう言いました。
この世のすべての憎しみを詰めこんで、ありとあらゆる業を背負わせて、絶望という絶望を味わった私に用意されていたのは、ぬるま湯につかったような、ともすれば綿で包まれるようなそんなあっけのないハッピーエンドでした。
結局幸せになれたのは、私と一握りの人間だけで、私を苦しめてきた人たちにとってはバッドエンドなのでしょう。
どうせなら、みんなが幸せになれるハッピーエンドを書いてくれたらいいのに。そう思ったところでその人には伝わらないし、物語の結末が変わることはありません。
多くを犠牲にした上に成り立つこの幸せは果たして本当に幸せなのでしょうか。そう問いかけたところで、その人は素知らぬ顔をするだけです。いえ、届かないのだから仕方のないことなのですけれど。
ただ、知っておいてほしいのです。あなたが生み出した私という存在を、私たちが住むこの世界のことを。あなたが書いた通りになるこの物語は、あなたの頭の中にだけれど、たしかに存在していて、私たちはそこで生きているのです。
あなたに生かされているのです。
だから、願わくば次はみんなが幸せになれるようなそんなハッピーエンドを。

3/29/2023, 2:15:13 PM