屋上から見下ろして映る群衆は浮足立っていた
パラパラと降る天気雨なんて気にも留めずに
国を救った英雄の凱旋を今か今かと待っている
柔らかい雨では今から起きる惨劇を防ぐことはできない
いっそのこと視界すら奪うほどの
激しい雨が降ってくれればいいと願う
そうすればこの凱旋も中止になる
柔らかく温かな雨なんかじゃなくて
もっと激しく冷たく俺を覆いつくしてくれ
俺の罪を洗い流すように
深く染みついて消せない硝煙の匂いを
かき消すように
……そんなことは今更無理だとわかっている
本当は俺の罪を断罪してほしいんだ
雨はやんだ
集中して俺と世界を隔絶させる
人々のざわめきは遠のく
俺の視界には英雄の笑顔のみ
引金に力をこめた
11/6/2022, 1:17:16 PM