ささほ(小説の冒頭しか書けない病

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きらめき

あれは私がたぶん幼稚園の年中さんだったときだから、いやあ自分で驚いちゃうけど半世紀前のことだ。私は幼稚園の園舎にいて、外では雨が降っていた。窓から園庭を眺めると、水たまりに落ちる雨がダイヤモンドのようにきらめいて見える、と幼稚園児である私は思った。水たまりから目を離して空を見ると、空の半分が黒雲で暗く、もう半分は白い雲と青空であかるく、雨が降っているのに日が差して、いわゆる天気雨や狐の嫁入りと呼ばれる空模様になっていた。私は生まれて初めて見た天気雨と水たまりのきらめきに驚き、これを一生覚えていることにしようと心に決めた。あの光景を忘れないように何度も何度も記憶を反芻したから今もはっきりとあのきらめきを覚えていて、天気雨の日は必ずあの日のことを思い出す。

9/4/2024, 12:46:54 PM