時折、ずっとずっと昔の夢を見ることがある。
何年も前。遠い日の思い出なのに、やけにはっきりとした夢。
兄と喧嘩をして、泣きながらいつも遊んでいる公園に走ったのだ。喧嘩の原因も、その後の事もぼんやりとしか記憶に無いのに。その数分はいつになってもくっきり残っていて。
泣きじゃくりながらブランコに乗っていれば、同い年くらいの子が声をかけてきたのだ。
「だいじょうぶ?」
「だいじょう、ぶじゃ、ないっ」
心配するように聞かれ、強がる事もせずただ涙を落とす。ひっくひっくと言いながらブランコを揺らしていれば、その子が私の手を掴んで。
「こっちきて!」
そう言って少し奥の草むらに歩かされた。ぽかんとしていれば、その子はしゃがんで、何かを探し始める。
「何してるの?」
「よつばのクローバー探してるの!見つけたら幸せになるんだよ。一緒に探そう!」
幼い声なのに、やけに頼もしく聞こえた。
私もその子も手が汚れる事なんて気にせず、一生懸命草をかき分けて。少しして私の視界に映る、四枚の葉っぱ。
「あったぁ!」
と、小さな手で四つ葉を掴んで。そこで目が覚める。
なぜこの夢を何度も見るのかは分からない。けれど、この夢を見るとなんだか良いことがありそうで。
ずっと前の遠い日の思い出。その後の事も、クローバーをどうしたのかもあまり覚えていない。それでも、私の中では今でも生き続けている出来事だ。
(遠い日の思い出)
7/17/2022, 3:37:13 PM