言葉はいらない、ただ・・・・―――
ピカピカと照明が光るバーのステージ。
その上で演奏をしているのは無名のバンド。
そんなバンドを気にする人もなく、皆グラスを片手に
話に花を咲かせていた。
「海くん、頑張れ…!」
センターボーカルである彼を見つめ、独り呟く。
普段は無口で大人しい彼が、ステージの上では
大きく口を開けて、綺麗な歌声を響かせるんだ。私は、
彼のあの表情が、あの歌声が世界で一番大好きなんだ。
「嗚呼。言葉はいらない。ただ―――♪」
サビに入るところ。このフレーズが1番好き。
ねぇ海くん、愛の言葉はいらないから。
好きの一言もいらないよ。
ただ、その歌声を。いつまでも私に聞かせて。
8/29/2022, 10:39:11 AM