『君は天使のように旅立って行った』
「実は、私もう死んでいるんだよね」
これが、屋上に立った君の第一声だった。
空は澄んだ青色が、絵の具のように塗られていた。
顔面が硬直して動かなくなってしまった僕にかけた君の言葉は「うそうそ。冗談だって!」……であって欲しかった。しかし、現実はこうだ。
「嘘だったらよかったのにね」
君はこれを『マジ』だと。何かを諦めてしまったようなため息と共に言ったのだ。
僕は質問をどストレートにぶつけた。
「……なんで死んだんだ?」
「殺されたの」
即答。自分の死因ってのはもう少しためらいがちに言うものかと思っていたけど、君は違った。
「あれはねー、塾の帰りだった。暗い夜道を歩いてたら男の人がねー」
それどころか、ことの顛末までこうして続けて話し出すのだから。導入までちゃんとこなしている。
「……あーごめん」
しかしここから言葉が紡がれることはなく、小さな声で君は謝った。
「嘘」
うそ?
「今までの話。嘘だよ。私、まだ死んでないの」
ごめんね。と申し訳なさそうに笑う。
別に謝る必要はない。友達同士の軽口として片付けられる範囲であると思う。それこそ、明日隕石が落ちて世界が滅ぶ……程度の。
しかし、軽口を言ったと思えないほど、君の目は黒々としていた。
数分の沈黙後、チャイムが響く。
「あ、チャイムだ。もう帰ろう」
居心地が悪かった僕は、そう言ってさっさと踵を返そうとしたが、君がついてこない。
振り向いたら君は、いつの間にか高いフェンスを乗り越えていた。強い風に、セーラー服がはためいている。
君がこちらに気づいて、優しく微笑む。そして叫んだ。まるで舞台の上で台詞を読む役者のように。
「私、 になりたかったの!!」
一瞬、映画のワンシーンを見ているかと思った。君に魅入ってしまい、動くことができない。
そして、
10/30/2025, 1:29:12 PM