モンブラコン*

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 山合の湖が広がるこの場所に、昔、
 だいだらぼっちが護る村がありました。

「違います、今は地龍に出世しましたっつぅの。なのに何でこのボクが、恋敵の女狐のお守りをしなきゃならないんだよ…」
 最愛の部下、カマレが拾って来たのは、本来なら討伐するべき妖怪の“失敗作の合成獣の少女”だった。
 この女狐、最初の頃は人形の様に意思がなかったのに、最近は心が在るように見えてきた、ボクのカマレが愛情を注ぎやがったせいだ。
 女狐は、今さっきカマレが仕事に行った方角の夜空を無表情で見上げている。
「日の出まで帰って来ないぞ…はぁ、言葉解んないか………間抜けのどこが良いんだか…」
 女狐が顔だけ動かしてこちらを見た。
 無表情の紅い瞳をボクに向けたまま、足が使えない女狐は腕の力だけで動いて、部屋の隅にあるカマレが作った縫いぐるみを口に咥えて、こちらに迫って来た。
「何?何?何~~~!?」
 角に追い込まれた。勿論余裕で迎撃出来るのだが、それをするとカマレは、女狐と村を出る。とか言い出すの高確率。
 ボクの目の前の女狐は、どっこいしょ…という具合で拙く座ると、縫いぐるみを口から両手に持ちかえ……。
 縫いぐるみでボクを叩き始めた。無表情で。
「てっ…とっ…うおっいっ…痛くねぇけど……うぅあ何なんっだぁぁぁ~……」

 日の出まで続いた。

10/30/2023, 8:30:51 AM